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製造原価報告書の見方(製造業のみ)

製造原価報告書とは、
1年間で商品をどれだけ作ったのか、
それを作るのにどんな経費がかかったのか計算した書類
です。


工場などで商品を自社製造している
製造業の会社が作成する決算書です。

→建設業の会社は「完成工事原価報告書」

損益計算書「売上原価」の内訳という位置づけです。

以下、説明していきますけれども、
まず次のリンク先で売上原価の内訳計算を理解してから
読みすすめると分かりやすいと思います。

製造原価報告書と損益計算書の関係

これから説明する製造業の会社の状況です。

・自社工場をもっており、そこで商品を製造している
・完成した商品はすぐに本社倉庫に納入、そこで保管される
・売上注文があったら本社倉庫から出庫


会社の製造原価報告書と損益計算書を並べると次のとおりです。

ひとつひとつ項目を説明していきます。

材料費

商品製造のため当期に使った材料です。

材料費内訳の詳しい内容については
次のリンク先をごらんください。

労務費

工場で働く従業員の給与手当のことです。
本社で働く一般従業員の方の給与手当と内容は変わりません。

経費

工場で発生する経費もろもろです。
水道光熱費や減価償却費、消耗品費などです。

→販売管理費の減価償却費との違い

仕掛品

製造途中の未完成品のことをいいます。

→仕掛品は経費?資産?

売上原価および製品

損益計算書の「売上原価」は、
「損益計算書の見方 売上原価の内訳」で説明した内容と同じです。

「商品」ではなく「製品」となっている点が少し違うだけです。
製造業の場合、商品を外部から仕入れるのではなく、
自社で商造するので「製品」となっています。

いまの時点では、
製造原価報告書と損益計算書が
「当期製品製造原価1,080」という数字でつながっている
という点を注意しておけば大丈夫です。

言葉がややこしく、分かりづらいので、
なじみのある言葉にいい換えると、次のとおりです。

当期に投入した経費=材料費300+労務費400+経費500=1,200

前期末の未完成品120+当期に投入した経費1,200ー当期末の未完成品240
=当期本社に納めた完成品1,080という計算になっています。


「当期投入した経費に未完成品をプラスマイナスしたら
 なぜ当期本社に納めた完成品になるのか」

という疑問はひとまずおいておき、
上記2つの表を
数量で表現します。

工場が本社に納めた完成品の数と
本社に納入された工場からの完成品は9個で一致
しています。

完成品の製造単価は@120です。
製造単価=完成品1つ製造するのにかかった経費です。

販売単価は@200です。

未完成品の製造単価も@120です。
しかし、完成していないのに、
完成品と同じ単価で計算するのは違和感があります。

そこで、
未完成品の数量を使って調整しています。
例えば、未完成品の実際個数は4個だったけど、
完成品になるまでの半分50%くらいの状態だから
4個×50%=完成品2個分と考える、といった具合です。

この例では、説明を簡単にするため、
すべての未完成品は全製造工程の半分50%の状態としています。
進捗率(加工の進んでいる割合)50%の状態といいます。
残り半分の工程によって100%完成品になります。

前期末の未完成品は実際2個だったので、
2個×50%=完成品1個分とみなします。

当期末の未完成品は実際4だったので、
4個×50%=完成品2個分とみなします。

これから未完成品に材料や加工を加え、
徐々に完成品に近づけていきます。
進捗率が100%に近づくにつれて
実際の数量に近づいていくイメージです。

製造原価報告書の投入と産出

製造原価報告書を
投入(インプット)と産出(アウトプット)の関係で表したのが以下の表です。
左側が当期投入計、右側が当期産出計です。
番号は説明用です。

【1】前期末の未完成品@120×完成品換算1個(実際は2個)=120を
当期に完成させます。
      ↓
【1】=【3】=120です。
これに【4】材料や労務費などの経費を追加投入します。
あと50%で完成ですので、当期に同額120追加します。
      ↓
前期の未完成品が完成します。
【3】120+【4】120=【7】240の完成品になりました。
@120×2個=240です。

完成品換算で1個だった未完成品が
完成によって実際個数と同じ2個になりました。

【6】当期に製造を開始したものの、期末までに完成しなかった未完成品があります。

期末に棚卸(たなおろし=数量を数えること)をした結果、
全製造工程の半分50%しかできていないものが
実際4個ありました。未完成品の完成品換算数量は4個×50%=2個です。

未完成品の期末在庫金額は@120×2個=240となります。

【5】前期末時点では手を付けておらず、
当期ゼロから製造を開始して、期末までに完成した製品があります。

【2】から【4】【6】を差し引けば【5】が計算できます。
結果は840の完成品です。@120×7個となります。

結局、当期の完成品は

【7】前期の未完成品を追加加工してできた完成品240が2個
【5】当期ゼロから製造に着手して期末までにできあがった完成品840が7個

合計完成品1,080が9個となります。上の表の色付きの部分です。

ちなみに、投入と算出の全体は

【1】前期未の未完成品にかけた分120
【2】当期投入した経費1,200
合計1,320
      ↓
【4】前期の未完成品への追加投入分120
【5】当期ゼロから作った完成品分840
【6】当期末の未完成品にかけた分240
合計1,320

どちらも同額で一致しています。

製造原価報告書の計算方法

製造原価報告書は、
当期の完成品を計算するための表です。
上の図の色付き部分を計算するための表です。

先ほどは製造原価報告書の投入産出関係を説明するため、
【1】前期末の未完成品120+【4】追加投入経費120=【7】前期分当期完成品240
【5】当期ゼロから製造して完成した完成品840
【7】240+【5】840=当期完成品1,080と分けて計算しました。

しかし、
当期の完成品総額1,080だけを計算するのであれば、分ける必要はありません。

【1】前期末の未完成品120+【2】当期投入した経費1,200
 ー【6】当期末の未完成品240=当期完成品1,080

と計算できるからです。

製造原価報告書の形式はこの計算式を表現しています。

→そもそも@120の計算方法

損益計算書の売上原価に続く

本社に完成品を納めた後は
損益計算書の売上原価内訳に続きます。

以降の流れは製造業以外の売上原価と同じです。
詳しくは次のリンク先をごらんください。

「完成品」→「商品」
「工場から納入された完成品」→「商品仕入」
と読み換えてごらんください。

製造業以外の会社は、会社外部の業者から仕入れ、
製造業の会社は、会社内部の工場から仕入れている、
という点を除いて、ほとんど同じです。

棚卸が重要という点も同じです。

製造業の会社では、完成品だけでなく
未完成品および材料の棚卸も重要になります。

→もうけを計算するには棚卸が重要

どんな製造原価報告書が良いか

製造原価報告書は投入と産出を表しているので、
少ない投入でより多く産出している、つまり
効率性の高い製造原価報告書が良いといえます。

しかし、それは
製造原価報告書だけを見ても分かりません。
損益計算書の売上や利益の情報と合わせて、はじめて
効率的だったかどうか分かるからです。

・売上総利益率(粗利益率)=売上総利益÷売上高
・原価率=売上原価÷売上高

これらの比率を計算して、
売上総利益率が高まったら(原価率が低下したら)
効率性の高い状態といえます。

→売上総利益率と原価率の関係

まず損益計算書で効率性が高いか低いか確認し、
その理由を把握するため、製造原価報告書の内容を検討する
という流れになります。以下のとおりです。

・前期から引き続き同じ商品を製造しているのに、
 前期よりも売上総利益率が下がった
      ↓
前期と当期の製造原価報告書の当期投入経費を比較すると、
 どうも材料費の割合が増えている、材料費があやしい
      ↓
・材料費は単価×数量で計算できるから、
 材料仕入単価が上がったか、
 数量が多くかかった=失敗品増加による追加投入が増えたかのどちらか
      ↓
・工場長を呼んで確認してみよう

当期の製造原価報告書だけを見ても、
有益な情報は得られません。

前期の損益計算書および製造原価報告書や
当期の事業計画書(生産計画)と比較して検討する必要があります。



製造原価報告書の説明は以上です。

次に、貸借対照表(会社の財産内訳表)の説明を行います。

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西田恭隆(nishida  yasutaka)
     ◆公認会計士
         ◆中小企業診断士
             ◆税理士事務所

所長の著書

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